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むかし むかしのお話しです。八重山に仲良しの三人組がいました。
小さな頃からこの島で育った三人はいつも一緒。
今日も畑仕事を済ませ、一緒にお昼を食べていました。
今日の三人の話題は〝ぐそうについて"
『なぁ… あの世ってどんなところかなぁ』
『花畑とかいう人もいるけど、俺達が花畑に行く…っていうのも、ピンとこんよなぁ』
『悪い事して、地に落ちるのは恐ろしいし…』
『…』
『俺達の中の誰かが、先に死んだら、初七日の日に出てきて、
あの世が、どんな場所(ところ)か教えあわ ないか?』
『いいねェ…』と仲良し三人組は妙な約束をしました
ある日の事です。
三人は各々自分の畑仕事を済ませ、
いつものようにお昼ごはんを一緒に食べようと集まってきました。
でもサンダーの姿がありません。三人の中でも一番くいしん坊で、
お昼ごはんはいつも一番乗りなのに…。
二人はサンダーを呼びにサンダーのキビ畑に入って行きました。す・る・と…
『あいっ! でーじなとぉ~ん!』
そこには変わりはてたサンダーの姿がありました。
不吉な事は言うものではありません。
『わったぁが、ぐそうの話の約束をしたから〝くち うぅーいんどー〟で、
サンダーがぐそうに呼ばれたのかなぁ…』
『サンダーよーい。早く見つけてあげられなくてごめんな…。うぅーとぉーとぅー。』
サンダーがハブに噛まれてこの世を去って、ちょうど七日が過ぎました。
二人はそろってサンダーの家に線香をあげに行きました。
『バカな約束』をした事を悔やむ二人ですが、
サンダーは生前約束を守る男だったので、
二人は約束どおりにサンダーに語りかけてみる事にしました。
『おーい、サンダーよーいあれから一週間が経ったけど
ぐそうはどんな場所(ところ)ねぇ?おしえてきみそぉーりー』
すると『ハイサイ! ちゃーがんじゅー!』と
少し薄くなった様な気がするサンダーが元気そうに姿を現しました。
腰を抜かす二人…。
びっくりする二人の事などおかまいなしにサンダーは
約束どおりにぐそうの話をしています。
『あのよォ、ぐそぉもこの世もあんまり変わらんよォ。
おれがぐそぉに行って、どーなるのかなぁー?って思ってたら、
先に行ってた人から〝もぅすぐ村長がくるはずだから、
一週間で村長のぐそぉの家を建てないといけないから、お前も手伝えー。〟
って言われてよォ。ぐそぉに行っても、ゆっくりするヒマないさァ。
ずーっと大工仕事してるんだよぉ。急いでいるからゆっくりもできないさァ。
じゃあ行こうな。仕事があるからよォ。』と、
何事もなかったようにアッサリとぐそぉ報告をしてくれました。
あっけにとられる二人。
あっそうそう…。
ぐそぉに行って一つ教えてもらった事がある。
人が亡くなって墓におさめる時、
出るのを急いで墓に背を向けたらダメだぞ。
一人であの世に行くのが嫌な人だと、
後ろからつかまえられて、道づれにされるからな。
そこまで言うとサンダーは
「じゃあ、俺は村長の家造りで忙しいから、
今日はこの辺でなぁ…。元気でやれよ。」と、
二人を見送りました。
とても亡くなった友人とは思えぬ再会に
二人はキツネにつままれた気分です。
帰り道で…。「今の本当にサンダーだったよな。」
「あいつ死んだよな…。」 「だよな…」
二人は(思わず)立ち止まり、サンダーの家をふりかえってみました。
え~俺だから大丈夫だけど、他の人が死んだ時は、
絶対墓に背中見せるなよー友人サンダーからの忠告です。
ひゃ~二人は死にものぐるいで逃げました。
「母ちゃん…、母ちゃん…、サンダーがよォ…、
村長のよォ…、死んで…、家建てて…」
「はいはい、おかえりなさい」
二人の話をまともに聞いてくれる人はいませんでした。
ところが…。
サンダーの話を聞いてちょうど一週間が過ぎた日、
二人が畑仕事を終えて家に帰る途中、
村長の家の前を通りかかった時です。
たくさんの人が目に涙をうかべて、
村長宅に入って行くではありませんか…。
「ありィ…、サンダーの言ってた通りやっし…」
びっくりする二人。
次の日、皆で村長の納骨に参列しました。
「母さん、おばちゃんもおじちゃんも
お墓から後ろ歩きして出てくるけど、なんでねェ?」
子供にたずねられたお母さんは
「この前亡くなったサンダーおじちゃんがいるでしょう。
サンダーおじちゃんがぐそうから話してくれたんだけど…。」
と死者の話をしてくれました。